感想 『本格妖怪マンガが読みたいなら他をあたれ』
(今年は買った(読んだ)本やマンガ、聴いた音楽について、できるだけきちんと
エントリを書くことにしようかと思ってるんですが。
どんだけ「きちんと」が続くかというと、難しい……。
なお、マンガについては色々思い入れがあるので、時に過剰に思い入れを語ったり、
エライ辛口な批評を書くかとは思いますが。(今回の一発目からして……))
で、このマンガ。
どっかで聞いたようなタイトルなのは気のせいじゃないな、どう考えても。
ゴツボ作品は今回初見。小洒落た表紙とタイトル、アオリに惹かれて買ってみたが。
ぶっちゃけた話、設定は目新しくないし、話の内容的にも特にオススメするところはない。
売りはユルいノリらしいが、ヒネた主人公はユルい以前にたぶん何も考えてないだけで、
性格は今風の若者的な「エネルギー使いたくない」無気力少年。
一方サブキャラクターはテンション高めのいかにもオタクマンガ的人物が多く、
それぞれの場当たり的な行動、台詞回し、会話の間などは典型的なオタクマンガのそれ。
主人公は亡くなった祖母のあとを継げと、突然大天狗に言われても大して驚かないし、
素性不明の同居人に対しても、ほとんど何の言及もしない。
一度、いかにもマンガ的な「なんであんたが居るんだ!」というツッコミがあるだけ。
普通の感覚の読者なら、相当違和感を覚えるのではないか。
肝心のモチーフ、もののけについても、すねこすりなどの割とメジャーな(←どこでだ)
妖怪に加えて、現代的な妖怪を登場させるなど、一応の工夫はみられるが、
登場人物のちょっとした行動の変化の原因を妖怪のせいにしているだけなので、
それが妖怪である必要がない。
キレる14歳だの24歳だの大食いだのの原因が、妖怪であったと云われたところで、
なんの面白みも説得力もないでしょ?
ただし、トラブルの原因となった人物や妖怪をなんだかんだで上手く丸め込んで
事態を収束する主人公のやり口はちょっと面白かった。
基本的に単なる屁理屈だけど、ものすごく個人的で身勝手な理由で騒動を起こす
人物相手ならば、それでも問題あるまい。
おそらく作品世界自体が、ヘビーさと縁遠いところにあるだけなのだ。
オビにもある「テキトー」「どーでもいい青春」といった形容は、
作者の姿勢も含めて、極めて的確にこの作品を表している。
逆にキビしく言えば、要するにうすっぺらい。
「もののけのデザインがテキトーでごめんなさい」とは作者の弁だが、
僕が「もののけに対する作者の愛が感じられない」などと云ったところで、
おそらく作者はそんなものを表現したいのでもなければ、これを読んで楽しむ読者も
そんなものを望んじゃいない。
「取り敢えず生きる」様を描くこの作品は、たぶん「取り敢えず」読まれて、
「取り敢えず」消費される。それだけのこと。
誰かが「青春時代」などと呼ぼうが、ただ自分の目の前にある日々を過ごす。
今の時代、どこにだってあるハナシではある。
しかし。しかしだ。
どれだけユルかろうと、平凡であろうと、それでも「良い物語」は存在する。
下世話だと思いつつも、言い換えれば、それが欲しいからお金を払うのだ。
少なくとも僕は、数年後タイトルも思い出せなくなるような最近のJPOPみたいなものに
お金なんか出さない。
残念だけど、「ゴツボは変わった」とでも云われない限り、
二度とこの人のマンガは手にしないな。
あ、一つ気に入ったとこがあった。
ヒロイン(?)の女の子が
FREITAGっぽいバッグ(劇中ではFLEI TAC)を
背負ってるのは良かった。
黒っぽいセーラー服に鮮やかなテント地のバッグは、さぞかし映えるであろう。
このあたり、本格妖怪マンガにはなかなか見ないセンスね。
しかし、中学生なのに高いカバン使ってんなー……。ま、絵的にかわいいからいいか。